社長メッセージ

社長インタビュー

Q. 2021年3月期の経営環境と実績をどのように捉えていますか?

社長メッセージ

代表取締役社長 門田 道也

2021年3月期の経営環境は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界的に都市封鎖や移動制限などの措置がとられ、各国の経済活動が停滞しました。国内では、国内外の需要の落ち込みによる製造業の生産活動の低下や設備投資計画の先送りが見られ、海外においては、中国の経済活動が正常化する一方で、欧米や中国以外のアジアの景気は厳しい状況が続きました。

そのような中でも、当社グループの主要市場である電子産業分野では、人工知能や5Gの普及、在宅勤務の広がりなどから半導体や電子部品など幅広い分野で需要拡大が継続し、国内外ともに設備投資や工場稼働は堅調に推移しました。

当社グループの業績は、受注高と売上高こそ新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け微増にとどまりましたが、利益面では増益が継続しました。受注高、売上高については、米国で精密洗浄事業を展開するペンタゴン・テクノロジーズ・グループ,Inc.の経営成績を新規連結した一方で、お客様工場の稼働率低下により水処理薬品の需要が縮小したほか、国内の一般産業向けメンテナンスや土壌浄化でもお客様の実施計画に延期の傾向が見られました。

事業利益は原価率の改善や販売費及び一般管理費の減少により前期比で10.6%の増益を確保しました。原価率については、国内の一部の事業において追加原価の発生があったものの、グローバルでの調達の効率化や海外子会社における製品・サービス構成の見直しにより改善しました。販売費及び一般管理費については、移動制限や在宅勤務による減少に加え、経費削減努力による効果も寄与し、減少しました。また、超純水供給事業における一部のお客様の契約解除に伴う清算益や遊休資産の売却益をその他収益に計上したことにより営業利益が増益となり、当期利益は過去最高となりました。

※ 事業利益は、売上高から売上原価ならびに販売費及び一般管理費を控除した恒常的な事業の業績を測る当社グループ独自の指標です。IFRSで定義されている指標ではありませんが、財務情報をご利用いただく際に有用であると考え、自主的に開示しています。

Q. 中期経営計画「MVP-22(Maximize Value Proposition 2022)」の3年目における施策の進捗をどのように評価していますか?

MVP-22計画では、CSRを経営の中核に据え社会との共通価値の創出に努めるとともに、仕事の品質とスピードを飛躍的に高めたビジネスプロセスを実行することで、お客様に新たな価値を提供し高い収益性を実現することを目指しています。本計画の3年目である当期は、新型コロナウイルス感染拡大という世界的な問題に直面しましたが、既成概念にとらわれない変革を推進すべく各重点施策に積極的に取り組みました。

まず、総合ソリューションの拡充においては、製品・技術・サービスと契約を包含した水平展開可能なソリューションモデルの創出に引き続き注力しました。この成果として、工場における節水に貢献するRO膜装置の運転最適化サービスなど、新たに6件のモデルを完成させ、開発済みのモデルとあわせ13件のラインナップとなりました。コロナ禍によりお客様の現場での行動制限や検証作業の遅れが出たことから、展開のスピードにはやや物足りなさを感じていますが、4年目以降の拡大に向けた基盤は整ったといえます。

ビジネスプロセスの変革とビジネスモデルの変容に向けては、デジタルトランスフォーメーション(DX)を最優先課題として取り組んでいます。2020年4月にはデジタル戦略本部を新設し、グループ全体でDXを推進する体制を整えました。その一環として、当社の子会社である米国のAIベンチャー企業フラクタと、水処理におけるDXとAI/IoT製品の共同開発プロジェクト「Meta-Aqua Project(メタ・アクアプロジェクト)」を立ち上げ、AIにより電力消費量の削減や運転管理コストの削減を実現する最適運転ソリューションを開発しました。生産面では、調達・製造・物流のグループ横断プロジェクト「Global Supply Team」の活動に継続して取り組みました。このプロジェクトは、グループ各社のサプライチェーンの責任者をメンバーとして編成し、グループのネットワークを活用した調達・製造の最適化やノウハウの共有によるコスト低減に加え、物流も含めた事業継続の体制強化を目指すものです。当期には、前期を上回る原価低減を実現し、今後も継続的な収益改善効果が期待できます。

海外においては、これまでのM&Aにより確立した日本、アジア、EMEA、北南米の事業体制を基盤に、グローバルとローカルの両面から収益性の向上に取り組みました。グローバルな取り組みとしては、当社グループのRO膜薬品に関わる製品・技術をはじめとする経営資源を結集した「Project Acorn」が、始動から2年目を迎え、世界共通の製品ラインナップの構築に加えて、グループ全体の生産体制の最適化や、事業拡大の基盤となる人材の育成など、着実な成果を生み出しています。ローカルな取り組みとしては、ASEANにおいて、高付加価値の製品・技術・サービスに集中した営業を域内で進めたほか、欧州では高収益体質への転換に向け製品構成の見直しを行いました。この結果、ASEANや欧州の収益性は、全社の利益率向上に寄与する水準にまで改善してきています。一方、米国では、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受け、新たに統合して発足したクリタ・アメリカInc.のPMI※1を当初の想定どおりに進めることができませんでしたが、ペンタゴン・テクノロジーズ・グループ, Inc.の連結子会社化により、成長市場である電子産業の顧客接点と現場接点が拡充されました。

非財務面では、TCFD※2の提言に基づき、CO2排出削減に関する長期目標を設定し、気候変動問題への取り組みを開始しました。また、国連グローバル・コンパクト(UNGC)※3内に設立された水資源問題に関するイニシアチブであるWater Resilience Coalitionに設立会員として参加し、世界各地域の水ストレス下にある流域の水資源保全に関する中長期目標や活動指標の設定、水資源に関する総合プラットフォームの開発といった取り組みを開始しました。さらに、当社グループのダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを加速させるため、専門組織を設置し、ビジョンや施策の策定を行いました。

※1 Post Merger Integration(M&A成立後の統合プロセス)

※2 気候変動関連の情報開示と金融機関の対応について検討するため金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」

※3 各企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組みづくりに参加する、自発的な取り組み

Q. MVP-22計画4年目となる2022年3月期の施策はどのようなものですか?

2022年3月期は、MVP-22計画の達成に向け、正念場となる重要な一年と位置付けています。社会課題を的確に捉え、共通価値の創出とお客様への迅速な価値提供により、さらなる収益性の向上を目指します。

まず、DXの推進によるビジネスプロセスの変革とビジネスモデルの変容に取り組みます。デジタルツールやAI/IoTの活用により、多様な現場接点から収集した情報やデータを開発、営業、生産、運転管理といったバリューチェーン全体で「水に関する知」として活用し、顧客価値を創造する仕組みの構築と運用を推進するほか、新たなビジネスモデルとしてデータドリブン型ソリューションを創出すべく、グループ・組織間での協業を推進していきます。前期にスタートしたメタ・アクアプロジェクトについても活動を強化し、水処理装置の運転効率化と最適化に加え、設計の自動化も推進します。

また、お客様の経済的価値向上と環境負荷低減等のCSRの推進を高度な次元でバランスさせ、お客様の企業価値の向上に貢献するソリューションを提供する体制を構築します。お客様の生産プロセスの深い理解に基づき、課題解決効果の高い総合ソリューションやCSVビジネスの拡大を目指すとともに、新たなビジネスモデルの創出による顧客接点の拡充に向け、ウェブ上のプラットフォームを活用し、多様な水処理ソリューションを提案する仕組みを構築していきます。

グループにおける経営資源の最適活用に向けては、2021年4月に100%子会社である栗田エンジニアリング株式会社を当社に吸収合併しました。同社のエンジニアリング洗浄事業と当社の関連事業の融合を進め、社会・産業インフラ市場の中核事業とすべく、水処理装置・水処理薬品・洗浄サービスを組み合わせた総合ソリューションを推進する体制を構築し、収益性の向上を図っていきます。生産プロセスの面からは、スタートアップ企業とのアライアンスなどにより、当社エンジニアをコア事業に集中させることで、エンジニアリングチェーン、サプライチェーンの強化を図ります。また、多様な視点やバックグラウンドからイノベーションを創出する風土を醸成するため、人材や働き方のダイバーシティを推進する仕組みや体制の整備を進めていきます。

海外の事業基盤の強化も最重要課題の一つです。北米では、新型コロナウイルスの影響により実施が遅れているクリタ・アメリカ社のPMIを進め、生産・販売体制の効率化を図ります。また、2021年4月にはカナダの水処理薬品会社であるキーテック・ウォーター・マネジメントを買収し、産業の集積地であるカナダ東部の事業基盤を獲得しました。当社の北米子会社との共通市場である一般産業向けのソリューションを北米全体で展開すべくシナジーを発揮していきます。同じく4月には中東地域での事業展開の強化を目的として、アクア・ケミー社との合弁会社クリタ・アクアケミー Ltd.を連結子会社化し、事業拡大の鍵となる製造拠点を獲得しています。アジアでは、ASEAN地域において、大幅なCO2排出削減を実現するサービスやリモート診断などの新たなビジネスモデルに集中して経営資源を投入することで、収益性の一層の向上に結び付けるとともに、水処理薬品と水処理装置の子会社を合併した台湾において、両機能を融合した総合ソリューションの展開を加速させていきます。

Q. クリタが長期的に目指すありたい姿とはどのようなものですか?

コロナ禍において、クリタグループは、あらためて事業そのものが社会と産業を支える多くのお客様の事業継続に関わるという、自らの役割の重要さを認識しました。持続可能な社会を実現するためにどのような貢献をすべきか、お客様の事業を継続するためにどのような価値を提供すべきか。この問いに対して、グループを挙げて、社会価値から水処理を再定義し、自らの変容を加速させる必要があると考えます。MVP-22計画においては、2018年4月のスタート以来3年間、お客様の課題を起点としてビジネスプロセスの変革、ビジネスモデルの変容を進めてきました。ここからの2年間は、顧客価値の先にある社会価値を見据え、社会課題を起点に経営者と従業員一人ひとりが、従来の枠を超え、既成概念を壊し、お客様や取引先様も含めたバリューチェーン全体における価値の最大化に取り組むことが重要になると考えています。

2020年、当社の取締役会は、クリタが社会とともに持続的に価値を生み出すための「価値創造ストーリー」について議論しました。策定されたストーリーは、当社グループのコアコンピタンスが、どのように「顧客・社会からの信頼の獲得と持続可能な社会の実現」というパーパスに結びつくかを表したものです。クリタには、多種多様なお客様、産業における多くの現場接点があります。そこで得た水に関わるさまざまな課題や情報によって構築した「水に関する知」は、クリタが長期的な成長を実現するためのコアコンピタンスとなっています。社会課題を起点に、自社の事業の在り方を変え、「水に関する知」を活用したソリューションにより、社会に新たな価値を提供する。その結果として社会や産業に変化をもたらすことが、当社グループの存在意義であると考えています。まだ価値創造の道筋を明らかにした段階ですが、今後、個々の戦略やKPI、評価の仕組みなどを統合的に紐づけていくことで、より強固な、構造的な改革を伴ったストーリーとして発展させていきます。

Q. 最後にステークホルダーの皆様へのメッセージをお願いします。

MVP-22計画の数値目標である、事業利益率15%、ROE10%以上の達成に向け、コロナ禍という逆風の中でも各重点施策の効果が表れ、収益性の質は着実に改善してきているという手応えを感じています。残り2年間においても取り組みを加速させ、最終年度には、グローバルな高収益企業として進化し、社会との共通価値を創造しているクリタでありたいと考えます。持続的な成長に向け、事業の変容に取り組む当社グループに引き続きご理解とご支援を賜りたく、よろしくお願いいたします。

2021年7月

代表取締役社長
門田 道也

※このページは、統合レポート2021の社長インタビューを掲載しています