社長メッセージ

ステークホルダーの皆様へ

社長メッセージ

栗田工業株式会社
代表取締役社長 門田 道也

 中期経営計画CK-17(Competitive Kurita 2017)の最終年度である2018年3月期は、クリタグループにとって、変革の方向性への確信と克服すべき課題を実感した年となりました。

 世界的な景気回復を背景に経済全般が堅調に推移する中、クリタグループにおいては、海外事業を中心に年来の取り組みが実を結び、着実な業績の改善が見られました。

 しかし、CK-17計画の業績目標が未達に終わったとおり、いまだ確固たる収益基盤が確立されたとは言えず、今後クリタグループが新たな成長ステージに上がるために、事業モデル変革や社員の意識改革の必要性といった課題も見えてきました。

 これら課題の解決に向けて、新中期経営計画MVP-22(Maximize Value Proposition 2022)のスタートに先立ち、社会におけるクリタグループの存在意義を再確認しました。新企業ビジョンの制定をはじめ、社会との関わりの中で成長していくクリタグループの姿を明確化したCSRに関する方針の策定、成長機会としてのCSVビジネスへの注力などをテーマとして掲げ、5ヵ年の中期経営計画の中核に据えました。新たに策定したMVP-22計画では、グループの全員が獲得すべきマインドセットとスキルセットとして、「3つの『見る』」という考え方を提示し、スピードを上げて変革に取り組んでいきます。

株主様はじめステークホルダーの皆様には、MVP-22計画実現に向けたクリタの変革にご理解とご支援をいただきますようお願い申しあげます。

  • CSV(Creating Shared Value):共有価値の創造を意味し、経済利益活動と社会課題の解決を両立させること

社長インタビュー

"新中期経営計画MVP-22(Maximize Value Proposition 2022)のスタートに当たって"

前中期経営計画CK-17の振り返り

 クリタグループの2018年3月期は、増収増益という結果を残すことができました。受注高は、水処理薬品事業における新規連結と水処理装置事業における大口案件の受注により大幅な伸びとなり、売上高も、水処理薬品の増収ならびに水処理装置の順調な工事進捗やメンテナンスの伸びにより大幅な増加となりました。営業利益は、販管費の増加があったものの、増収と水処理装置事業の売上原価率の改善により増加しました。

 当期の決算は、対前期比では好業績と言えるかもしれませんが、前中期経営計画CK-17の最終年度としては、必ずしも満足のいく結果とは言えません。CK-17計画において掲げた4つの重点施策を振り返ると、まず、「新市場の開拓」については、海外における事業拡大やスタートアップ企業への出資などの実績がありましたが、利益の拡大までには至らず、収益性改善が今後の課題となりました。「生産体制の最適化とグループネットワークの活用」については、海外におけるM&Aで得た生産拠点や新設した開発拠点の活用を開始するとともに、中国や韓国においては生産能力向上による収益性改善が見られました。「競争力のある商品・サービスの創出」については、ドリームポリマー®やCORR®システムなど、新たなビジネスモデルの核となり得る商品を市場に送り出すことができましたが、お客様視点のソリューションを実現するビジネスモデルの創出までには至りませんでした。「資本効率の改善」については、成長投資と株主還元により資本効率が改善しましたが、ROEが日本企業の平均的なレベルには届いていません。

 このように多くの課題を残した前中期経営計画でしたが、評価できる点もあります。一つ目は、クリタグループが本格的にグローバル化へシフトすることができた点です。この3年間を振り返ると、かつて東南アジア・東アジアに偏っていたクリタグループの海外事業基盤が、M&Aによって欧州や北米事業の厚みが増しました。また、買収企業に対するPMI※1プロセスを経験したことによって、グローバル展開のノウハウが蓄積されました。

 もう一つのポイントは、中国、韓国での事業拡大です。当社はこれまで中国や韓国に拠点を置いてはいたものの、水処理装置事業のEPC※2については日本主導で行ってきました。これが、現地のグループ会社主導のサプライチェーンが整い、エンジニアリング力や調達力、あるいはプラント建設能力といった水処理装置事業を行っていく上での基盤を構築することができたことは大きな進歩だと考えています。

  • ※1PMI (Post Merger Integration):M&A成立後の統合プロセス
  • ※2EPC(Engineering, Procurement and Construction):設計、機材調達、建設工事を含む一連の工程

"新中期経営計画MVP-22"

水と環境の独創的価値の創造者たれ

 MVP-22計画を策定するにあたり、解決すべき課題を克服し、今後のクリタグループの成長を確固たるものにするために、中長期的に目指すべき姿を明確化する必要があると考えました。

 2016年4月に社長に就任して以来、常に課題として感じていることは、当社のビジネスモデルが水処理専業で創立した70年前から、ほとんど変わっていないということです。クリタグループのビジネスモデルは、いまだに水処理薬品は1kgいくらで買っていただく、水処理装置も装置自体をお客様に買っていただくという取引が主流です。メンテナンスなどのサービス事業により、お客様と長期的な関係を構築してはいますが、価格設定という視点で見ると、クリタの提供する価値に相応しい対価を実現できているとは言えません。一方で、企業として安定成長してきたゆえに、クリタの社員には激しく変化する事業環境に対応していくマインドセットができていないと感じます。

 この点を変革しなければ、真のグローバル企業、もう一段上の高収益企業に進化することはできないと考えます。よって、クリタの全社員に、中長期的に目指す姿を明確に伝えるべく、企業ビジョンを再定義することから着手しました。

 新企業ビジョン「持続可能な社会の実現に貢献する『水と環境の独創的価値の創造者』」の下、クリタはビジネスモデルの変革に取り組みます。お客様の製造プロセスやユーティリティへの理解を深め、お客様が気付いていない価値、クリタグループにしか提供できない価値を創造することで、ソリューションプロバイダーにとどまらない高次元のバリュークリエーター、お客様にとって無二の存在である"独創的価値の創造者"になることを目指します。

CSRを中期経営計画の基礎に

 新企業ビジョンの制定に先立ち、2018年2月にCSRに関する方針を公表しました。B to B企業であるクリタグループは、これまでお客様の課題の解決を通じて社会に貢献してきましたが、今後も社会から必要とされる企業であるためには、自身がどのような社会的価値を生み出していくのかという視点を持ち続けることが必要であると考えます。CSRに関する方針においては、未来への責任を果たす上での基盤となる「安全性」「公正」「人権尊重」といった3つの基礎テーマに加え、水処理というクリタグループの事業自体の社会的意義に着目し、「水資源問題の解決」「持続可能なエネルギー利用の実現」「廃棄物の削減」「産業の生産技術進歩」という4つの成長機会テーマを設定しました。

 これら成長機会テーマに沿って、対象となる商品・サービスを「CSVビジネス」として整理し、開発の方向性を決めるとともに、お客様に提供する価値を見える化していきたいと考えています。クリタグループのCSVビジネスは持続可能な開発目標(SDGs)との親和性も高いものであり、CSVビジネスの成長が社会との共通価値の創造と同義となることを目指していきます。

 今後、この取り組みの実績として、CSVビジネスの進捗を継続的にご報告していきたいと考えています。

MVP-22計画を実現するための「3つの『見る』」

 MVP-22計画の目標は、現状の延長や各部門の数値の積み上げではなく、クリタグループの5年後のあるべき姿を示したものです。計画期間についても、高い目標と新企業ビジョンの実現に向けた戦略にじっくりと取り組めるよう、従来の3ヵ年から5ヵ年に変更しています。グローバルなビジネスプロセスの変革と価値の創造が実現すれば、確固とした収益の基盤が構築できると考えます。

 MVP-22計画の数値目標としては、収益性と資本効率を重視します。MVP-22計画の最終年度には、M&Aを除いた売上高の成長率を年平均3%以上、売上高営業利益率15%、自己資本当期純利益率(ROE)10%以上を目指します。クリタグループの事業が目指す「サービス契約型」ビジネスへのシフトによる事業ポートフォリオの見直しが進捗すれば、M&Aを除く売上高の伸びは平準化され、同時に売上高営業利益率は改善していくはずです。また、保有資産の圧縮を通じて資本効率を改善するために、各事業セグメントにおいて投下資本利益率(ROIC)による事業の効率性管理を導入し、ROE目標の達成も目指していきます。

 MVP-22計画達成のカギを握るのが「顧客から見る」「価値から見る」「外から見る」という「3つの『見る』」であると考えます。

①「顧客から見る」

 「顧客から見る」とは、お客様の視点からすべての思考をスタートし、お客様にとって最適なビジネスプロセスを構築するということです。

 これまでクリタグループは、事業とお客様に恵まれ、お客様のニーズに対応した水処理を行うことで着実に成長してきました。ビジネスのスタイルとしては、お客様から求められる製品やサービスを提供していくというものでした。

 今後は、水処理のプロフェッショナルとしてお客様の生産プロセスやユーティリティ設備を熟知することで課題を先読みし、お客様の期待を超える提案を行うというビジネススタイルに変わっていきたいと考えています。そのためには、これまでの縦割りの事業別組織では的確な対応が難しいと考え、2017年4月から、市場別の事業組織に移行しました。具体的には、国内の水処理薬品とメンテナンスの営業組織を一体化するとともに、海外営業の組織では水処理薬品と水処理装置の区分をなくしました。お客様の営業窓口を一本化し情報を一元化した上で、各事業の強みを結集できる横串の通った組織体制となっています。商品・サービスの単品売りではなく、お客様との高い親密性と的確なプロファイリングに基づく総合的なソリューションの実現により、提供する価値を増大させていきます。

②「価値から見る」

 「価値から見る」とは、経済的な面だけでなく、社会的な面において高い価値を提供し、それに見合った対価を得るビジネスモデルに変革することです。

 このためには、お客様の現場における個々のニーズだけでなく、お客様の経営の視点をクリタ自身が持つ必要があります。例えばお客様は通常、サプライヤーからより良い製品をより安く購入しようと考えるでしょう。これに対して「価値から見る」場合、エネルギーや水の使用量、産業廃棄物の発生量の削減といった効果に着目した提案、会社全体の効率性や社会的価値まで視野に入れた、お客様の経営が目指す提案を行っていきます。単品の製品やサービスが持つ以上の価値の提供を、ビジネスモデルの変革に取り込んでいきたいと考えています。

 お客様に提供する高い価値に見合った対価を実現するため、取引形態も変えていくことが必要です。クリタグループは今後、お客様に商品・サービスを切り売りするのではなく、「サービス契約型」のビジネスモデルへの移行を目指していきます。例えば、当社がお客様の設備を直接運営するかたちの総合的なサービスを提供することで、お客様がこれまで以上の利益を享受し、それを当社とシェアするというような手法も、「サービス契約型」モデルの一形態です。

 サービス契約による価値の提供は、すでにクリタグループの高付加価値な商品やサービスを利用しているさまざまな産業のお客様に適用可能です。クリタグループは化学的処理と物理的処理での双方で長い年月の間に培った経験とノウハウを持っています。水処理薬品、水処理装置に加えメンテナンスを組み込んだ総合的なソリューションを提供できることが本来の強みです。「サービス契約型」ビジネスは、この強みを明確にしたモデルであり、MVP-22計画では、モデルの開発と拡大を推進していきます。

③「外から見る」

 「外から見る」とは、激しく変化する外部環境に対し、自社の経営資源だけでは対応できない分野では、自前主義と決別し、積極的に外部の経営資源を活用することを意味しています。ドイツのIndustrie 4.0に代表されるように、現在、世界中の製造業で、AI、IoT、ロボティクスといった最新の技術を用いた生産の自動化が進められています。どの企業にとっても自社資源だけでこうした状況に対応することは不可能です。

 クリタグループは、水のプロフェッショナルとして、これまで水処理に関する技術はできる限り自社で開発してきました。しかし、技術や事業環境が激しく変化する中で、高品質の商品・サービスを効率よく提供していくためには、自社にないノウハウについてはオープンイノベーションを活用することが必要です。

 直近では、2018年5月にFracta, Inc.の株式を取得しました。同社は、米国で人工知能/機械学習(AI:Artificial Intelligence/ML:Machine Learning)を活用した水道管の劣化予測ソフトウエアサービスを展開しているベンチャー企業です。今回の出資を通じて、AIとMLの最先端技術およびノウハウを取得し、クリタグループの水処理技術やサービスに適用することにより、水と環境の分野でIoT/AIを活用した新たなデジタルビジネスの創出、拡大を図っていきます。

今後の投資と資本の活用

 確固とした収益基盤構築のために、今後やるべきことは至ってシンプルです。成長分野への積極投資と既存事業の収益性改善に注力します。

 今後5年間は、成長分野には、過去にないスピードと規模で投資を行う考えです。MVP-22計画の5年間における投資先として、超純水供給事業への投資や新事業基盤構築のためのM&A、CSVビジネス創出のための投資を想定しています。

 投資を賄う資金については、CK-17計画の3ヵ年においても営業キャッシュ・フローを上回る投資と株主還元を行ってきましたが、今後は営業キャッシュ・フローに加え、保有する投資有価証券や売上債権の圧縮といったバランスシートの効率化によりキャッシュの創出に努めるほか、負債の活用も視野に入れています。

株主還元については、配当性向30~50%を目安に、できるかぎり増配の継続に努めていきます。また、資金需要と株価を勘案した上で、自己株式の取得も検討していきます。

経営の基盤としてのガバナンスの充実

 クリタグループは、近年の欧州や北米におけるM&Aやグローバルな拠点整備により、海外売上高比率も30%を超えるまでになっています。かつての日本主体の事業構成から急速に変わりつつあり、グローバルな経営基盤としてのガバナンスの整備が喫緊の課題となっています。

 MVP-22計画においても、重点施策としてグループガバナンス体制の整備を掲げ、企業ビジョンや行動準則の浸透、内部統制の仕組みの整備など、グローバル基準での体制構築を進めていきます。

 2018年3月期のコーポレートガバナンス改革の実績としては、取締役会評価において指摘された、長期的な企業価値向上のための企業ビジョンの見直し、環境・社会に関する目標の具体化や投資案件の審査体制の強化、株主に伝えるべきテーマ・メッセージの明確化といった課題について、新企業ビジョンやCSRに関する方針の策定、投資委員会の設置、政策保有株式の売却といった取り組みを行いました。また、2019年3月期に向けては、取締役など経営陣の後継者選定が課題とされました。これを受けて経営人材の育成システムや人事評価の諸施策などの整備を行い、クリタグループの経営の中核を担う人材の育成に注力していきます。

最後に

 私が社長に就任してから3年目となります。過去2年間よりもさらにスピードを上げて、グループの収益基盤強化と成長力の向上に取り組んでいきます。またその成果を、ステークホルダーの皆様に還元していきたいと考えています。ステークホルダーの皆様には変革を進めるクリタグループにご期待いただくとともに、引き続きご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。